3分でわかる技術の超キホン ポンプの基本原理と分類
ポンプは、低い場所から高い場所へ、低圧部から高圧部へ、あるいは遠方へ、水(淡水・海水)、化学液、石油(原油・精製油)など様々な液体を送り出すために使用される機械です。
上下水道、化学プラント、石油精製設備、火力発電、など液体を用いるシステムの心臓にも例えられる重要な機械です。ポンプが無ければ私達の生活は成り立たないと言っても過言ではありません。
製造業の第一線技術者として活躍されている本コラム読者諸氏におかれましても、日頃様々なポンプの購入仕様書の作成や、ポンプの運転あるいは保守管理に携わっておられる方も多いと思います。
そのような方々にとってはポンプに関する知識の復習の意味で、また経験の浅い新入社員や若手の方々にとってはポンプの基礎知識を習得するための情報として、ポンプの基本についてなるべくわかりやすくご説明したいと思います。
なお、以下の説明においては、水という表現を用いる場合がありますが、液体を代表しているものとします。
目次
何故ポンプが必要なのか?
重力により、水は自然な状態では、川の流れのように高所から低所へ流れます。高所では低所よりも位置エネルギーが大きいので、水を低所から高所へ送るために、この位置エネルギー差に見合う圧力エネルギーを水に与える必要があります。
また、水を遠方へ送るためには配管を用いますが、配管内を流れることで配管の内壁と流体の摩擦による圧力損失が生じます。そのため、所定の場所まで水を送るためには、高低の位置エネルギー差に相当する圧力に、この損失分に見合った圧力エネルギーを加える必要があります。
水を送るために必要な圧力エネルギーを与える機械がポンプです。
ポンプの大分類
ポンプは大きく分けて、ターボ形ポンプ、容積形ポンプ、その他の形式のポンプに分類されます。
「ターボ形」は、軸に取り付けられた羽根車の回転による遠心力を主として利用し、液体にエネルギーを与えるものです。
「容積形」は、空間体積の減少による圧縮作用により液体に圧力エネルギーを与えるもので、往復運動を利用する「往復ポンプ」と、回転運動を利用する「回転ポンプ」があります。
容積形のうち「往復ポンプ」は、水鉄砲や注射器を思い浮かべるとその作動原理が比較的理解しやすいと思います。シリンダの中をピストンが往復することで連続的に液体を押して圧力を高めて送り出します。
また「回転ポンプ」は、歯車(ギア)やネジ(スクリュー)、あるいはベーンの回転により空間体積を減少させることで連続的に液体を押して圧力を高めて送り出す構造のものです。
どの形式のポンプを使用するかは、流量、圧力、用途、液体の性質、などの仕様に基づいて選択します。
容積形やその他の形式のポンプは、極小水量超高圧など比較的特殊な用途で使用されることが多いので、このコラムでは一般的によく使用されるターボ形ポンプについてご説明したいと思います。
※「容積形ポンプ」の分類についてはこちらをご参照ください。
また、気体を扱うポンプである「真空ポンプ」の分類についてはこちらのコラムで解説しています。
ターボ形ポンプの分類(種類)と作動原理
羽根車の回転により生じる遠心力を主として利用する「ターボ形ポンプ」は、下記のように分類することができます。
(1)遠心ポンプ
「遠心ポンプ」の作動原理は、簡単に説明すると、バケツに水を入れて振り回すイメージです。
回転しているバケツの底に穴をあければ、遠心力により速度を得た水が周囲に吹き出します。
この時、水の持つエネルギーは速度エネルギーが大きく、そのままでは配管内の摩擦などで生じる損失が大きくなって、効率面で不利となります。
そこで、余剰な速度エネルギーを効率的に減速して圧力エネルギーに変換すること(静圧回復)が必要になります。
① 渦巻きポンプ
「渦巻きポンプ」は、回転する羽根車の周囲にボリュートと呼ばれるケーシング(渦巻き室)を配置して、羽根車から出た水の速度が、渦巻き室内を通過するうちに徐々に減速して圧力に変換される構造のものです。
② デイフューザポンプ(タービンポンプ)
「デイフューザポンプ」は、「タービンポンプ」とも呼ばれます。
デイフューザポンプは、回転する羽根車の外周に、案内羽根(ガイドベーン)と呼ばれる回転しない固定翼を配置して、羽根車から出た水の速度が、案内羽根の間を通過する内に徐々に減速して圧力に変換される構造のものです。
遠心ポンプでは羽根車が取り付けられる回転軸の方向から水を吸い込み、軸直角方向(遠心方向)に水を吐き出します。
(2)斜流ポンプ
「斜流ポンプ」においては羽根車から出た水は回転軸に対して斜め外方へ流れ出ます。
羽根車から斜めに流れ出た水を渦巻き室内に導入して流れを軸直角方向に変えて吐き出すものは「渦巻き斜流ポンプ」と呼ばれます。
渦巻き型ではない「斜流ポンプ」は、羽根車から出た流れを”ボウルケーシング“と呼ばれる固定翼案内羽根に導いて、流れを整流して旋回成分をなくすとともに、静圧回復した流れを軸方向へ戻します。
斜流ポンプの羽根車は、遠心ポンプと軸流ポンプの中間であるので、遠心力と揚力の両方を利用して水に圧力エネルギーを与えます。
(3)軸流ポンプ
「軸流ポンプ」は、プロペラ型の回転羽根車と固定案内羽根の組合せでできた住居用の換気扇などでよく見かけるものと同様の構造のポンプです。
軸流ポンプでは、遠心ポンプと異なり、吸い込み、吐き出し、ともに水の流れは、回転軸方向となります。
軸流ポンプでは、羽根車の翼断面が飛行機の翼と似たような形状をしており、羽根車入口と出口の翼角度の違いによって生じる揚力を利用して水に圧力エネルギーを与えます。
遠心ポンプと同様、羽根車の出口では、未だ速度エネルギーが大きいことと、回転軸周りに流れが旋回しているので、静圧回復と軸方向へ流れを整流するための固定翼案内羽根を羽根車の出口に設けます。
「流量」と「圧力」からポンプの選択を考える
ポンプ仕様の2大要素は、「流量」と「圧力」です。
すなわち、どのくらいの量の液体をどのくらいの圧力で送り出すのか、ということです。
圧力は液体の密度が与えられると位置エネルギー単位と同じ長さ(m)に換算することができ、揚程(head)と呼ばれます。流量には質量流量と体積流量とがあり、液体の密度が与えられると質量流量を体積流量(m3/minなど)に換算することができます。
3種類のターボポンプのどれを選択するかについては様々な条件がありますが、流量と圧力の点から考えると、概ね次のような区分になります。
- 流量は少なくて良いが、揚程を高く出したいとき ⇒ 遠心ポンプ
- 流量を多く流したいが、揚程は低くて良いとき ⇒ 軸流ポンプ
- 流量が比較的多く、揚程もある程度必要なとき ⇒ 斜流ポンプ
石油精製、石油化学、化学、食品、製紙(パルプ)など、一般産業用の製造設備で使われるポンプは大半が遠心ポンプですが、一部で斜流ポンプが使用されることもあります。軸流ポンプは、下水用雨水ポンプ、河川排水ポンプなど大水量を扱う用途に使用されます。
以上、ポンプの基本原理と分類についてご説明しました。紙面の関係で、今回はこの辺で。
次回は、ポンプ特有の困りごとであるキャビテーションについてお話ししたいと思います。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)
関連コラム(3分でわかる技術の超キホン)
- ポンプ連載①:ポンプの基本原理と分類
- ポンプ連載②:ポンプとキャビテーション
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- ポンプ連載④:ターボポンプの比速度と吸込比速度
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- ポンプ連載⑱:ポンプの軸封を総整理(分類・用途・使い方)
- ポンプ連載⑲:真空ポンプの基礎知識と分類・種類
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